福音のひびき

主の洗礼の祝日は、イエス様が洗礼者ヨハネから洗礼を授かった事を記念します。主の洗礼の場面は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの４つの福音書に書かれており、それだけイエス様の生涯に出来事でも重要な出来事であります。
特に、ルカ福音書の場合、イエス様の受洗そのものよりも、むしろ受洗後に起こった出来事に強調点があります。「イエスも洗礼を受けて祈っておられると、天が開け」 とありましたように、このイエス様が祈っておられる姿を描いているのはルカ福音だけであります。この事からイエス様の上に聖霊が降ったことと、神の声、すなわち「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」という神の声に重点がおかれている事がわかります。
イエス様に聖霊が降ったことと、それに続く神の声で、イエス様こそが待ち望んでいた救い主、洗礼者ヨハネが聖霊で洗礼を授けると預言した救い主であるとはっきりと宣言されたということであります。イエス様が一体、何を祈っておられたかは分かりませんが、静かな深い祈りであった事は確かなことであると思います。特にご自分のすべてを御父の望みに合わせる覚悟は、明らかだったと思います。
「天が開けた」のは、御父の心が開かれ、イエス様に対する望みが示された意味したのだと思います。聖霊が鳩の形で降ったのは、私たちのためにも必要なことでありました。鳩はご存じのように、自分がどんな場所におかれても、真っ直ぐ自分の家に帰る本能を持っています、イエス様も、この時、ご自分が御父から出て、そのみ旨を果たし、また御父のみもとに帰られる事を確信されたのだと思います。
イエス様の洗礼は、福音宣教の出発点でありました。出発点であったからこそ、御父に祈ることが必要であったと思います。言ってみれば、祈りとは自分の望み、願いを神さまに従わせようとすることではなく、神さまの望みに私たちの考え、意志を従わせようとする戦いでもあります。
イエス様は、最後は十字架にかかって死を迎えなければならないというご自分の運命を知りながらも、自分に与えられた使命をすべて完全に果たして、御父なる神様のみもとにまっすぐに帰ることを知っておられました。そして、御父のお望みのためにご自分のすべてを捧げられました。
今曰は、イエス様が、私たちキリス卜者と同様に洗礼を受けられた事をあら ためて考える日です。なぜ、全く、一つの罪もない、神の子であるのに、イエス様は洗礼者ヨハネに悔い改めの洗礼を願ったのでしょうか？
マタイ福音書によりますと、イエス様が洗礼を受けるためにヨハネの前に現れた時、「私こそ、あなたから洗礼を受けるべきなのに、あなたが私の所においでになるのですか」と言って、イエス様は「今は止めないでほしい。このようになすべきことを果たす事は、私にとって正しいことです」と言うイエス様のたっての願いでヨハネはしかたなく洗礼をさずけたのでした。「イエス•キリス卜は、罪人を救うために自ら人間となり、さらに十字架の死にいたるまで御父のみ旨に従うものとなられました。」 このイエス・キリストの生きかたには、すでに洗礼の時にも現れてぃます。
イエス・キリストは上から人間を救おうとはされずにむしろ下から、私たちのたちと一緒に苦しみ、悩みながらも私たちに救いを望まれたのでした。結局、イエス様には罪に苦しみ、ゆるしを願う私たちとご自分を同一化されようとするほどの愛ゆえに洗礼を受けられたのではないでしょうか？「あなたは、私の愛する子、私の心に適う者」という声が天から聞こえてきたと、最後に述べられていました。この「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」という言葉によってイエス様の福音宣教が開始されました。
そしてまた、この言葉はイエス様の福音宣教の終わり、イエス様が十字架かかり、引き取られた時も、この言葉が繰り返されました。いづれにしても、この意味は、イエス様は、生涯を通して、御父の愛する子、御父のみ心に適う者であったということであります。私たちにも洗礼を受けたとき、聖霊が降りました。そして、罪のゆるしと 永遠の生命が与えられました。御父は私たちの上にも「これは愛する子である」と認めてくださったのです。
パウロのガラテア人への手紙には「洗礼を受けてキリス卜•イエスと一致したあなたがたは皆、キリス卜を着ているのです。」という言葉がありますが、洗礼のよって新しく神の子として生まれた私たちは、本当に、神の子として自覚しているでしようか。
洗礼は単なる儀式ではありません。それは、私たちに新しい生命が与えられ、私たちの存在が聖なるものとなる事です。イエス様という方がいったいどのよろな方であるかと尋ねられたら、私たちはどのように答えるでしようか。「何よりも私たちと同じように洗礼を受けられた方だと答える事ができると思います。私たちは、洗礼の時、悪霊の拒否をいたしました。悪霊の働き、いざないを退けました事を思い起こし、洗礼の恵みが与えられた事に感謝し日々の生活が過ごしていける力が与えられますように祈りたいと思います。